読子の本棚

読んだ本をここの本棚にしまっておきます。

44冊目:星の子 今村夏子さん

こんにちは、読子です。

産前はおそらくこれが最後になると思います。誘発分娩スタートするみたい。

 

今回は「あひる」に続いて、積読本から今村夏子さんの本をもう一冊。

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「星の子」今村夏子さん

 

 

本作は映画にて履修済みですので、感想では映画についても言及させていただきたいと思います。

 

【映画情報】

主演:芦田愛菜さん

監督:大森立嗣(日日是好日)

制作年:2020年

 

キャスト:岡田将生さん(南先生)、新音さん(なべちゃん)、蒔田彩珠さん(まーちゃん)、高良健吾さん(海路さん)、黒木華さん(昇子さん)他…

 

 

 

目次

  • 本編「星の子」
  • 小川洋子×今村夏子 巻末対談〜書くことがない、けれど書く〜

 

 

あらすじ

主人公・ちひろは生まれた時から身体の弱い女の子でした。何をしても引かない乳幼児湿疹は、ある日父が会社で同僚に勧められた水「金星のめぐみ」を使用したことで劇的な改善を見せます。

その感動的な体験から、ちひろの両親はとある宗教に傾倒しはじめます。日々増える宗教絡みの生活用品、繰り返される引越しとその度小さくなっていくちひろの家…宗教が日常を蝕む様子が淡々と描かれています。

 

 

感想

⚠︎ここからはネタバレ込みで、映画の感想も絡めて書きます⚠︎

未読の方はご注意を。

 

 

 

 

 

 

映画の方は世間が宗教への興味一色のタイムリーな時期に視聴したもので、夫の「これ今のタイミングで金ローで上映したら絶対バズってたじゃん。」には、いやほんとそれと思いました。でも期待に反してやらなかったですね。

 

 

私は一般的な感性を持っている人間なので(なんの主張?)『作品の間で起きた問題は解決してから終わって欲しい』というのが本音でしたが、そんな気軽に解決しないところが宗教のリアルでした。皆さんの映画の感想を拝見する限り終わり方にも賛否があるようですけれど、私はこれでよかったと思います。簡単に解決しないからこそ宗教問題。

 

主人公のちひろが、思春期の到来と共に自分の在り方に関心が向いていくことで「自分の日常は、周囲から見たら異常なのかもしれない」と感じ始めるところが本当に苦しかったです。姉のまーちゃんほど宗教(両親)に対して露骨に抗う姿こそ見せなかったけれど、親戚の雄三おじさんに「(両親と離れた方がいい理由については)わかってる」と言ったエピソードや、憧れの対象である南先生に両親を不審者と呼ばれ街を疾走した場面、両親に治療の為と金星のめぐみをかけられた時の拒否からは、大きな抵抗をすることなく宗教の中で暮らしてはいるものの、その理不尽さや違和感に明らかに気が付いているであろう様子が見て取れます。

当たり前に見ていた景色が当たり前じゃなくなって、信じてたものが嘘になってしまうのは辛いですよね。宗教二世の友達が「いずれは抜けたいけど、今まで当たり前に(習わしとして)そうしてきたから、慣習から外れることをするのは怖い」と言っていたことを思い出します。

 

何にせよ宗教の外にいるお友達カップルが良い子たちで本当によかった。

 

 

【映画の感想】

ちひろがバスの中でにこって満面の笑みで笑うシーンはモロに小さい頃の愛菜ちゃんって感じで本当に可愛いかったですし、街を疾走するシーンはお母さんを探してる時のMotherの芦田愛菜ちゃんそのものでした。

芦田愛菜さん、大人にはなってるんだけど子どもの頃の面影の良いところがきっちり残ってて流石だなあと。素敵なレディーになりましたね彼女は。

 

対して岡田くんはめちゃめちゃクズ教師の演技が上手くてビビりました…。調べてみたら柚木麻子さんの「伊藤くんA to E」でもクズ男の役やってたのね。しかもノリノリで!笑

坂本裕二監督の「大豆田とわ子と3人の元夫」でもクセあり元夫の役をしてましたし、なんだなんだ?岡田将生さんこういう役得意なのか?!と私界隈がざわついています:(´◦ω◦`):笑

 

それから、原作の方では言及されていない『行方不明のまーちゃんのその後』。こちらは映画できちんと回収されていたので、気になる方はぜひ映像作品を!原作を原作の空気感のまま映像に落とし込んでくれている感じがして、私としてはかなり良い作品だったと思います。リアルな宗教グッズっぽいモノとかデカい宗教会館とか、なんの違和感もなく集会に参加している沢山の信者とか…視覚的にも雰囲気を捉えやすい感じで、なんというか

「凄かったです(語彙)」

 

 

 

本のお話に戻って、同時収録の小川洋子さんとの対談について。対談の中で「宗教と虐待」という言葉が出てきて、自分の中で感想として落とし込めていなかった部分が形を成すようですっきりしました。作家さん同士の対談って面白い。

そもそも両親の宗教への入り口はちひろへの愛であり、両親は常にちひろのことを気にかけている様子がありました。しかしその一方で、生活を顧みず宗教グッズにお金を落とし込み、ちひろの夕飯は信者仲間から貰ったクッキーや他人の食べた残りもののお寿司(しかも貝ばかり!)、醤油をかけただけのお豆腐なんて事もありました。嫌がるちひろに治療と称して「金星のめぐみ(水)」をかける行為も、愛情の皮を被った静かな虐待のようにも見えました。

でも両親はそれを良しとしてやっているので…うーん、難しいですね。

 

答えこそ出ませんが、色々と考えさせられる一作ですので、映画・本作どちらであっても一見の価値ありだと思います。

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