こんばんは、読子です。
今週は寒暖差が凄いですね。急に2月を思い出したかのような寒さで驚きます。皆さまお風邪など召されぬようご自愛くださいね。
さて、では今回の記事!
「第2回 屋根裏の内緒話〜!」
今回も「郵便局のおじさんは9時40分ごろやってくる」のニードルさんとの読書会記事です。(ソロ読書は長〜いシリーズものを読んでいるので、ちょっとお休みです。)
今回の課題図書は私の選書!
「おいしいごはんが食べられますように」高瀬隼子さん
芥川賞受賞作品です。川上未映子さんの「乳と卵」を読んで「芥川賞系は合わないんだよな〜〜〜〜」とか言いましたが、前言撤回。夜遅くにNHKで放送していた番組で本書の内容が一部取り上げられており、その番組を見てからずっと気になっていました。
あらすじ
自分が嫌な仕事はしない、体調が悪くなればさっさと早退、みんなが残業していようと自分は定時退社…そんな風に振る舞うことが周囲に許される芦谷さんと、自分の仕事はきっちりと!な押尾さん、その間で不思議な空気感でのらりくらりする芦川さんの恋人・二谷の関係を、食を通して見ていくお話です。
感想
正直押尾さんの気持ちがすごく良くわかる。
自分たちだって我慢してるのに「〇〇さんは仕方ない」ってその人だけ許されるの、納得いかないよねえ。でも「自分もそうなりたいのか」って聞かれるとそれはちょっと違うってところも併せてわかるって感じ。
「みなさんが残業頑張ってるところ帰らせていただいたので、私はお家でお礼にお菓子作ってきました〜✿」なんて普通に考えて煽りティ高すぎると思うし、それが習慣化した結果周りのスタッフが「いつもお菓子作ってきてもらってるから、材料費出そう」みたいなこと言い出す流れはグロささえあるな、なんて思いました。
あのね、お菓子作り頼んでねえのよ!
家帰ってお菓子作れる元気あるなら、普通に仕事してよって思っちゃうよ?!!
っていうのが正論。
善意なのはわかるけど、勝手にお菓子出されて勝手にお金取られるの謎すぎんか?これがお付き合いなんだろうけれども、残務まで押し付けられているのにその間に楽しくクッキングしたお料理を食べさせられてしかもお金払わせられるの地獄すぎる。
でも他人にお仕事を強要できないのもわかる。私(というか大半の人はこっちのタイプが多いんじゃないか?)は「元気ないから帰ろ」とか「みんなが残業してても私は帰ります」ができない押尾さんタイプなので(※でも押尾さんみたいに仕事のできる女じゃない)、押尾さんの気持ちがとてもわかってしまう。
芦川さんサイドで語られることが無いからどうしても押尾さんに感情移入しちゃうのもあると思うけど。
きっと芦川さんみたいな人も押尾さんみたいな人も、二谷みたいな人もよくいるタイプの人間。それで、こういうの、職場や学校でよくある話なんだろうなあと思う。周りの人がその人の希望とかを汲んで守ってくれる空気で、その皺寄せは全然別の人のところに行って、みたいなの、きっととてもよくある事。当然芦川さんタイプの人がこの話を読んだら「いや、じゃあ押尾さんアンタも帰って好きなことすれば良いじゃん」という感想を持つとは思うんだけど、それはちょっと違うんだ〜〜〜〜〜
同じことをしても、同じ事を言っても「それが許される人」と「それが許されない人」がいるの。なんでか知らんけど。悔しいけど。
押尾さんが負けて芦川さんが勝った。正しいか正しくないかの勝負に見せかけた、強いか、弱いかを比べる戦いだった。当然、弱い方が勝った。そんなのは当たり前だった。
って二谷のモノローグにもあったけど、こういうのは実際に「守られるべき人」と「守られない人」の戦いで、そう言う場合は当然「守られる人=弱い人」が勝つって相場が決まってる。謎だけど、真理。
芦川さんも押尾さんも、二谷もよくいる人。その周りにいる原田さんや藤さんも良くいる人だった。だからこそ自分の中で“こういうタイプの人”としてある程度の解像度があるから、押尾さん目線で見る芦川さんも藤さんも原田さんもみんなモヤモヤする存在だったんじゃないかと思う。
「おいしい(健康的な)ご飯の強要は攻撃」という二谷の感覚があまりよくわからない、という意見もありましたが(ネットで見た感想)、これは今回が【ごはん】であっただけで、もっと広く見れば【その人が良しとする事】の強要なので、繰り返されれば攻撃にもなるのかなって二谷の気持ちもなんとなく察しがつきました。いわゆる押し付けだもんね。
でもそんなにも食への価値観が違ってる芦川さんと結婚すんのォ?!!とは思った。大丈夫か二谷…
高瀬隼子さんの文章、好きだなあと思ったので「犬のかたちをしているもの」「水たまりで息をする」もいつか読んでみたいと思います◎