読子の本棚

読んだ本をここの本棚にしまっておきます。

46冊目:ルビンの壺が割れた 宿野かほるさん

こんばんは、読子です。

まだまだ残暑が厳しいですが朝晩の暑さは少しずつ穏やかになり、柔らかな風が吹くようになってきましたね。もう少し涼しくなれば本も読みやすくなりますし、随分生活がしやすくなりそうですが。すぐそこまで来ている秋が今から待ち遠しいものです。

 

 

さて今回は、私が最近追いかけているブログ

「本とかライブとか猫とか(管理人:ゆきさん)」

の読了記事を拝読して以降、ずっっっと気になっていたこちらの本!

 

 

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「ルビンの壺が割れた」宿野かほるさん

 

 

「ボリュームは控えめなので忙しい時でも!」とすすめていただきましたが、見た目が本当に薄い…🫨!これなら時間を縫ってちまちま読むのも辛くなさそうです!

 

 

では早速本書について

 

 

宿野かほるさん

本作「ルビンの壺が割れた」がデビュー作で、プロフィールは一切非公開覆面作家さんです。

現在刊行されているのは、本作とAIをテーマにした「はるか」の二作品です。

 

 

あらすじ

未帆子のfacebookアカウントに届いたメッセージは、かつて恋人だった男性(水谷一馬)から届いたもの。「偶然あなたを発見したので、思わずメッセージを送りました(意訳)」と綴られたメッセージに隠された真意とは…?

元恋人の二人がfacebookでのメッセージを交わし続けることで物語が展開されていく、現代的な書簡体小説です。

 

 

感想

 

えっ、SNSこわ…!!!

 

書簡体小説の形式と表現しましたが、一般的なお手紙ではなくSNS上のやりとりで進行していくのがとても現代的でした。今やお手紙を書くことなんて珍しく、SNSのメッセージ機能の方がよっぽど身近。だからこそ一層、他人事ではない気味の悪さを感じます。

 

物語はメッセージ交換のみの進行なので、客観的な情報はほぼ皆無。読者はそれぞれが自発的に発する言葉だけを頼りに、登場人物に関するプロフィールや過去・現在のデータを読み取っていきます。

…ので、最初の数往復のやり取りで想像した人物像と作品中間部で想像した人物と、ラストのやり取りで見えた人物像が全部違って見えたりします。少なくとも私はそうでした。

 

その一方で水谷(男性)には一貫した印象も受け取れました。物語序盤ではストーカーみを感じてきもかったり、中盤では未帆子が子持ち既婚者であることを知っていながら過去の恋愛の感傷に浸ったメッセージを送っていてきもかったり、未帆子に質問をした事や自分の行動について逐一言い訳めいたことを(訊かれてもいないのに)弁解していてきもかったりと、終始不気味できもいのです。

そして、そこはかとなく文章から漂ってくる俺スゲー感ナルシシズムを感じてやはりキモいです。

 

「返事は無理にしなくても大丈夫」と言いながらも自分の体調の悪さをチラつかせたり、レスが途切れると「しばらく返事がなくて不安になりました」などと遠回しに返事を催促したり、小賢しい操作的な行動もいやらしかったです。

少ない登場人物ながらあらゆるタイプの気持ちの悪さを体験できる一冊で、ミステリ(イヤミス)っぽさもありながらミステリーと断言するには少し違うような内容でした。

 

今まで読んできた書簡体小説とは一味違うものを読みたいと言う方は是非お手に取ってみてください!

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宿野さんの小説をまとめて買ったので、次はもう一度宿野かほるさんの記事で「はるか」の予定です。