読子の本棚

読んだ本をここの本棚にしまっておきます。

24冊目:BUTTER 柚木麻子さん

 

こんばんは、読子です。

今回は柚木麻子さんのBUTTERについての記録です。めちゃめちゃ話題になった作品ですね。

ずっと読みたかったよ…

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柚木麻子さん

これまでに手に取った作品は「ナイルパーチの女子会」と「奥様はクレイジーフルーツ」の二作品。

どちらの作品もこってりと濃厚な人間模様が描かれていました。読み手の心にも結構グサグサきたりします。時にまじで致命傷。本作に至ってはタイトルまで随分濃厚なんですけれど、そこんところ大丈夫でしょうか…?(と言いつつも怖いもの見たさでソワソワしながら本を開きました。)

 

 

あらすじ

男性誌の記者を務める主人公・町田里佳が、複数人の男性から財産を奪い殺害した容疑で逮捕された女(梶井真奈子)に体当たり取材をしていくお話。

梶井はマーガリンとフェミニストが大嫌い。記者の里佳が面会に訪れる度に「偽物(マーガリン)は嫌い。本物は良いわよ」と語って聞かせます。梶井の口から紡がれるバターの魅力は、スラリとした里佳の体型、そして彼女のものの考え方にさえも影響を与えます。

里佳と梶井真奈子、そして里佳の親友・怜子の三人が織りなす人間模様は、バターによってどのように彩られるのでしょうか。

 

 

 

感想

複数人の男に結婚を持ち掛け、お金を吸い取った上に殺人まで犯した梶井真奈子。そんな彼女の容姿はお世辞にも華奢で美しいとは言い難いものでした。特別美しいわけでも無い彼女が男たちを虜にする謎…その部分を語るにあたり、早々からパンチ強めの言葉が入ってきます。(里佳サイドの語りです)

女は痩せていなければ話にならない、と物心ついたころから誰もが社会に刷り込まれている。

うっ…(心の声)

 

女性の大多数が共感できる文言ではありませんか?もうこれは、皆さんが小さい頃から嫌というほど味わってきた感覚だと思います。

 

 

そして、その感覚とは対称的に描かれる梶井真奈子。彼女は自分が自分であることを許し、己のスペックを無視して一人前の女であることを許容しているのです。綺麗な女だから男に必要とされるわけでは無く、彼女は「自分が唯一無二の存在だから」男に必要とされるのだという考え方をします。

主人公の里佳がルッキズムに生きにくくさせられている一般的な女性だとすると、梶井真奈子はその世界から解き放たれたある種特別な存在のように描かれているのです。

↑ここだけ読むと「梶井真奈子すごいな、ちゃんと芯があるなあ」なんて思ってしまいますよね。最後まで読むと感想は割とひっくり返りますけれど。彼女の認知の歪みはえげつねぇです。こいつぁバケモンだ。

 

男女ともに美容整形が一般的になり、多くの人がSNSに自分の姿をアップロードし、美しくあることはもはや当たり前で、言わせる人によっては「醜いことは堕落の象徴であり罪でさえある」口にするこの時代。ルッキズムにより一層生きづらさが増した今を生きる者の感性では、梶井真奈子の生き様はなんだか眩しくさえ見えてしまったりします。

まあSNSに写真やらの個人情報載せるのは危険よ」なインターネット老人会のババアは、まずルッキズム云々の土俵にすら立ててないんですけれどね。それでもやっぱり「美しくないと」という論調を目にする機会が多くなって、正直ブスなの辛えな…と思わないこともないのです。ドスコイ

最近Twitterとか開いても「このレシピで痩せた!」「痩せる薬」「このエクササイズがすごい!」ばかりがお勧めされて痩せへの圧力がすごい気がするの…辛いからあんまり表示しないで…デブのライフはもうゼロよ。

 

 

 

 

 

 

さて作品についてのお話に戻りますが、この作品は「首都圏連続不審死事件」の木嶋佳苗さんがモデル。

以前真梨幸子さんの作品で木嶋佳苗モデルの作品を読み、ある程度のイメージが固まっていたこともあって参考文献を読むまでは彼女がモデルだとは思っていませんでした。が、言われてみれば木嶋ムーブですねこれは。同じ人間をモデルにしても、作家さんによってかなり違う印象に感じるもんだなあ。

どっちの木嶋佳苗も好き!(語弊…!!!

 

ちなみに真梨幸子さんの木嶋佳苗モデルの作品は「5人のジュンコ」。こちらもドロドロとしていて、とても面白い作品でした↓

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トータル600ページ弱もあると主人公の里佳も随分と梶井に翻弄されるわけですが、最終的には登場人物皆が得るものがあって穏やかな終わり方だったのでは無いかと思います。辛い思いも沢山したけれど、その中で人間的な部分も大きく成長したんだろうなと感じました。

 

 

ちなみに読子はかなり終盤で脇役の発したとんでもない言葉におしっこちびりそうになりました。

👦「かさぶたって美味しいんだよ」

ぽろっと出てきた脇役がこんなサイコパスな言葉を放って消えるなんて思っているわけがないので、そりゃびびり散らかしますよ。

里佳も「確かにかさぶたってベーコンみたいだね🥓」とか思うな

 

 

かさぶたベーコンは置いておいても、この本に登場するお料理たちは全部とんでもなく美味しそうでした。コクや温度感のある描写で、常にお腹はぺこぺこ。読んだ皆さんもきっとバターたっぷりの濃厚なお料理が食べたくなるはずですよ。

私はここ数日でバター醤油のご飯と、じゃがバター、バターを使ったパスタを食べました。

医者に「体重増えすぎだよ」って言われてたのに、誘惑に負けました。私は悪くない。

 

ではまた次回!

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