こんばんは、読子です。
こちらは島本理生さんの「夜はおしまい」の感想編です。
本作は神父・金井さんのもとを訪れる四人の女性の“性”を描いた短編集です。一人あたり一編、以下の全四編で構成されています。
- 夜のまっただなか
- サテライトの女たち
- 雪ト逃ゲル
- 静寂
こちらの②(2)では太字の2.サテライトの女たち をご紹介いたします。(今回も長いので一編分だけです。)
今回の内容は“性について”“宗教について”と個人の価値観によりかなり捉え方が変わるテーマなので、アッ…っと思った方はブラウザバックをお願いいたします。何卒ご容赦くださいませ🙇♀️💦
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サテライトの女たち
「サテライト(衛星)のように惑星の周りをふわふわと漂う女性」という意味のタイトルでしょうか。
このお話は、複数人の男性の元で愛人業(今で言うパパ活?)をしている女の子のお話です。
彼女の本来の“居場所”である家は、あまり居心地の良さを感じられる場所ではありません。その代わりに惑星(男性)を中心に生きることで、衛星としての自分の居場所を見出しています。
なぜ家の居心地が悪いかと言いますと、実家の母は(特に宗教的な面で)主人公と価値観が大きくかけ離れているから。勿論宗教にのめり込むお母さんにも、お母さんなりの事情があるのですが。
家に帰っても母との折り合いが良くない。その寄る辺無さを埋めるのが、愛人業のお客さんである男性だったのです。
ただ今回の主人公は一話目「夜のまっただなか」の主人公とは少しスタンスが違うように感じました。一話目の女の子程、安心感を求めて男性に接触していません。むしろもっと割り切った…強かな生き方なのです。若いのに本当に強かなのよこの子。
男性を心の中で小馬鹿にしながらも、ヨイショして良い気持ちになってもらったり、楽しそうにお話を聞いたり、男性に身体を預けたりときちんと“お仕事”をしています。
相手を心の中で見下しつつも今までは大きなトラブル無くお仕事をしてきた彼女ですが、ついにある日その相手から想像を絶する行為を迫られることになります。
行為の後、彼女は自分が男性から受けた仕打ちの仕返しをするように「もう飲めない」と言うホストにアルコールをふっかけ続けます。それはもう急性アルコール中毒になるほどに。
愛人業のお客たる男性に過激な行為を迫られていた自分は、今や眼前の男性(ホスト)に客の立場を利用して迫っているのです。愛人の男性がしたのと同じように。
【男性>女性】という(主にパワー的なものによる)立場の優勢・劣勢は、この時【客<スタッフ】という形で覆りました。
そして、この自分が行った「立場を利用して相手を追い詰める行為」を告解する対象が例の神父・金井です。
後悔と自責と悔しさと悲しさと寂しさと…いろんな感情のないまぜになった彼女の耳に届いた「あなたは頭のいい人です。愚かなふりをするのはやめるべきです。」と諭す声は、とても優しい響きだったと思います。
自分の家(母)が自分の居場所たる惑星であってくれたら、彼女の人生はもう少し違ったかもしれません。とはいえ母が全面的に悪いとは言い切れないので(前述の通りお母さんにもお母さんの事情があります。)、やはり人生とは儘ならないなと思うばかりです。
物語終盤に神父に「お母さんが好きなのですね?」と問われ、自分の気持ちを確かめるように肯定する主人公の姿に、意識不明のお母さんがもう一度目を覚ましますようにと祈るような気持ちになってしまいます。
今回もとっ散らかってる上に長々しくて、推敲した文が書けない悔しさに歯噛みしています。ギリキリ
もう少し続きますので、よろしければ最後までお付き合いいただけますと嬉しいです!