読子の本棚

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7冊目:あなたの不幸は蜜の味 イヤミス傑作選②(2)

こんばんは、読子です。

昨日の記事に続き、こちらは「あなたの不幸は蜜の味 イヤミス傑作選」イヤミスアンソロジーの感想編(2)です。

 

 

収録作品は以下の六編です。

 

  1. 石蕗南地区の放火(辻村深月さん)
  2. 贅肉(小池真理子さん)
  3. エトワール(沼田まほかるさん)
  4. 実家(新津きよみさん)
  5. 祝辞(乃南アサさん)
  6. おたすけぶち(宮部みゆきさん)

 

②感想編(2)では太字の3.エトワールおよび4.実家について触れさせていただきます。

それでは前回の続きと致しましょう。

 

 

3.エトワール(沼田まほかるさん)

「オカンに似てるって言われて喜ぶ女なんて、この世に存在するわけないだろうが!!」

 

こちらはミステリアスな女性《奈緒子》に翻弄される女の話です。

主人公の女性は、妻のある男と不倫関係。

男から語られる妻・奈緒子の印象は、肝が据わっており非常に物分かりの良い妻です。

そんな良妻にも拘らず、男は「妻と離婚して君と一緒になりたいと思っている。離婚届も出してきた。」と妻を捨て主人公と結ばれようとするのです。

 

 

離婚成立後には晴れて男との同棲も開始。不倫には珍しい完全勝利パターンなのか?と思いきや、奈緒子の残り香は依然として男の元から消えません

奈緒子の存在がちらつくたびに「あの女には敵わない」の気持ちが主人公を蝕んでいきます。

 

男は既に自分のものになっているし、奈緒子には勝利しているはずなのに、私は何故こんな気持ちになるの…?

 

と、そんな日々に耐えきれなくなった主人公は「あなたは、奈緒子さんは物分かりが良くて離婚にも納得していると言うけれど、そんなわけがない。彼女が私たちのことを許すわけがない!」と声を荒げます。

対して男は「いや、奈緒子は母親の名前で、僕が想像して練り上げた女神だから。実在しないから!」の斜め上回答で応戦。

 

な に こ れ

 

しまいには「君は母に似ている」でとどめを刺しにきます。…不倫男かと思ったらどぎつ過ぎるマザコンだったんか…

でもこういうオチ嫌いじゃ無いんですよねえ。

 

 

 

4.実家(新津きよみさん)

なんでそこまで突き落とすのォ?!!!

イヤミスっていうか、これ…

「イヤ」じゃん!!!

 

主人公は夫と二人暮らしの熟年女性。

もともと主人公の我慢によって、ぎりぎり体を成していた夫との関係でした。しかし、夫の浮気がきっかけでついに彼女が家を飛び出します。

 

しばらく置いてもらえないだろうか、と子供たちの元を訪ねますが、嫁に出した娘を頼れば厄介者扱い。長男はほぼ婿養子状態でそもそも頼りづらい、次男は独身だが時々お金の無心をするような状態で頼りにすらならない。こんな時に頼れるような友達はいない。夫は浮気に対して否定したり反省するどころか開き直ってるので、すぐには帰りたくない…

と…ミステリー的なことは一切起きず、主人公がひたすら孤独で不幸になっていく展開ばかりが続きます。

 

唯一の望みであった実家でさえも、それまで住んでいた兄が「家含む遺産は全部嫁に託すわ」と遺書を書いて死亡しており、自分を受け入れる場所にはならない(兄嫁と折り合いが良くない)。

こんな時に帰れるような実家が無いなんて…

ならばいっそ、他人の手に渡ってしまった実家なんて!と、主人公は実家に火を放ちます。

 

自分の人生に光を見出せないまま、実家から自宅に帰るとポストには一枚の封筒。手紙の主は兄嫁でした。

その内容は「本来あの家はあなたの家であるべき。あなたに返します。」といったもの。

主人公は今頃燃え落ちているであろう実家を思い、呆然と自宅前で立ち尽くすのでした。了

 

いや終わるなて。ここで終わるなて!!

 

珍しく私には刺さらない作品でした。

イヤミス的謎要素が少なく、ただただ不幸になる主人公を見届けるだけで悲しさしか残りません。辛過ぎんか? 

 

まあ、これも一つ出会いという事で。

世の中にはいろいろなタイプの本がありますね。

 

 

 

本作に関する感想はもう少しだけ続きます。

あと一回分、お付き合いください。