こんばんは、読子です。
こちらは島本理生さんの「夜はおしまい」の感想編です。
本作は神父・金井さんのもとを訪れる四人の女性の“性”を描いた短編集です。一人あたり一編、以下の全四編で構成されています。
- 夜のまっただなか
- サテライトの女たち
- 雪ト逃ゲル
- 静寂
こちらの②(1)では太字の1.夜のまっただなかをご紹介いたします。(長くなってしまったので今回は一編分だけです。)
今回の内容は“性について”“宗教について”と個人の価値観によりかなり捉え方が変わるテーマなので、アッ…っと思った方はブラウザバックをお願いいたします。何卒ご容赦くださいませ🙇♀️💦
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夜のまっただなか
周囲の自分に対する評価を気にするあまり、大して好きでもない男に身体を差し出してしまう女の子のお話。
相手男性の中に自分の価値を見出す事で安心してしまう彼女を見ていると、とても辛い気持ちになります。こんな気持ちになってしまうのは、きっと彼女もその行為が自分にとって良いことでは無いとわかっているから。
作中で彼女が明確に「つらい」と口にすることはありません。ですが「友達もあんなことしてたし」と後悔を打ち消すようにして自身を納得させている姿がとても痛々しく描写されており、不安そうな顔をしている情景が目に浮かびます。もう引き返せない事態に陥ったことに対する後悔と、求められた瞬間に感じた安心感との感情が入れ替わるのを見るのがつらかったです。
こんなにも自分を蔑ろにせずとも、あなたはもっと誰かに大切にされるはずなのに…とついつい気持ちを寄せてしまいますね。フィクションなのにね。
自分本位の行為の末「危険日かどうか判らないなら心配だよね」と病院の受診費を差し出し、緊急避妊薬を貰うように促す男性の偽善的な行動にはどうしてもお腹がスタンドアップしてしまいました。
彼女が妊娠して困るのであれば初めから避妊をすべきだったのでは?緊急避妊薬を飲んだ後の猛烈な吐き気と戦うのは彼女なんだけど?お金渡しただけで、はい無罪ってつもり?優しいふりか?と色んな思いが渦巻きます。(正論ぶちかましたってしょうがないのにねえ。)
と…読者が勝手にキレ散らかしてるの素通りするように、喪失感や虚さを抱えた彼女は金井先生のもとを訪れます。
彼女には“先生に本を返す”という目的があったけれど、本当は心のどこかで金井先生に話を聞いてもらいたいという気持ちがあったのではないかな、と私は思っています。会話の後こそ「ようやく(先生から)解放された」と表現していますが、この金井先生を通して自分の行動と向き合うというプロセスはその時の彼女にはとって必要な行動だったのではないでしょうか。「無意識にその行動を選び取ったのね」と勝手に解釈。
金井先生との会話では「キリスト教は今の日本に必要?」というとっかかりから、
「宗教の教えは個人を抑制することが目的ではなく、あなたたちを取り巻く環境から守る為のものなのだと私は思う。(意訳)」
というメッセージを受けるのですが、この先生の言葉はすごく本質をついていると感じました。(なんなら主人公よりも私の方に響いてる)
恥ずかしながら、私はあまり熱心に宗教のことを考えた事はありませんでした。むしろ金井先生の否定した通り「あれをしてはいけない、これをしてはいけない」と“行動を縛る”ものだとすら思っていました。何の宗教かに拘らず、とにかく宗教=我慢みたいなイメージです。
そんなイメージを持っていた自分の無学とそれによる偏見、愚かしさで読みながら恥ずかしくなりました。これを機にきちんと思い改めなければならないな、と。
何にせよ彼女の夜が早く明けてくれますように。
あなたの太陽はもっと別の場所にあるはずよ。
サクサク読めるボリュームなのに色々と考えてじっくり読みになってしまいますねえ。
デリケートなテーマなのにザクザク言及してしまったので、誰かをお嫌な気持ちにさせてないかとても不安です。本当にごめんなさい。
夜はおしまい ②(2)に続きます。