読子の本棚

読んだ本をここの本棚にしまっておきます。

39冊目:破船 吉村昭さん

こんばんは、読子です。

毎日暑いですね。あっという間に七月ですもんね。

こいつ室内で快適に暮らしてるだろう癖に何言ってるんだろう…?って思った方、ご安心(?)ください。古めの病院なので空調のポテンシャルは無事終了。古めかしい吹き出し口から吐き出される風はそよ風程度です。…蒸しあげられております。(にっこり)

私も皆様と一緒で汗かきながらあちーあちーしてますよ、室内だけど。

 

 

さて今回は重みが…重みがありすぎる本でした。

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吉村昭さん「破船」

 

こちらはかなり前におすすめしていただいて、積読本として確保しておいた本です。おすすめをしていただいたことは間違いないのですが、実は一体どなたにすすめていただいたのか全く記憶が無く、申し訳ない…と頭を抱えている次第です。本当にすみませんせっかくおすすめしていただいたのに…

 

 

あらすじ

その船は、村民の望む「希望や恵み」だけを運ぶものではありませんでした。

主人公・伊作の暮らす漁村は、とても貧しい村です。家族を守るため男女問わず身を売って奉公に出たり、朝から晩まで働き詰めでその日その日の食事を海で確保してきたりと、大人から女子供まで村の皆が働き手として日々の生活の一端を担っていました。

そんな苦しい生活に、海は気まぐれに恵みを与えます。それが「お船」。

お船様とは破船のこと。難破して村の岩礁に乗り上げた船は、お米をはじめ多くの荷物を積んでおり村を豊かにしました。

皆がありがたがり、次はいつかと到来を待ち望む「お船様」でしたが、ある日到来したお船様には村民にとって望ましくない物を積載しており…

 

 

 

感想

怖い。表紙がかなり怖いです。

背面のあらすじを読まないマンの読子は、読む前はホラー寄りのジャンルなのかとさえ思っていました。

もちろん読了後は「なんか怖い表紙」から「悲嘆溢れる表紙」へとイメージが変わりましたが。それでも子供の頃に見たりしたら、恐らく普通にトラウマになると思います。夜に一人でせっちん行けない。

 

 

こちらの本は、冒頭に記した通り普段自分では絶対に手に取らないであろう作家さんなので「どなたかにおすすめいただいて」入手しました。

ただその方が、普段よくおすすめ本を紹介してくださるニードルさんだったのか、かなり初期に単発でコメントをくださった別の方だったのか、あるいはTwitterで見かけた情報からだったのか、積読してからの期間が長すぎて皆目見当がつきません。

 

…お心当たりのある方!!!(雑な呼びかけですみません)

私も読みましたよ…!!自分では選ばないジャンルでとても新鮮でした!!!!

正直「文体かためだな…」と読み始めはチキりましたが、読み始めると案外読みやすくて驚きました。

 

 

さて本編について。

貧しい漁村では皆が生きるのに必死。作中では“時化のタイミングで浜辺で火を焚き、船を呼び込み座礁させる事を狙う”など、お船様を招き入れるために賢しい努力をする描写があります。こうもどん底まで貧しいと「人命を奪うような謀りごとはダメ」とか、そういう倫理的な事を考える次元じゃないんですよね。

破船にはもちろん遺体もありますし、生き残りが居たとしても後のトラブルを回避するために命を奪います。一般的にはこんな状況を万歳して喜ぶなんておかしいですよね。ましてや命を奪うことなんて許容されるべきでない行動です。しかし村を維持するためには(村人を食い繋がせるためには)仕方のない事なのだろうと、読者も色々と飲み込みながら読み進めなければなりません。

 

そして表紙の絵柄から察せられる通り、辛いです。ずっと辛い。綴られる文面はどちらかと言うと淡々としているので、こう…「訴えかけるような…!」みたいな感じこそ無いのですが、どこまで行ってもなんだか薄暗いなあ…と。もちろん日々の小さな幸せ的描写もあるのですが、昔のリアルな漁村を描いているだけあって幸せのレベルが本当に“ささやか”

「なんか紆余曲折あったけどハッピーエンド!」みたいなのは本当に期待できません。救いのないリアルが見たい人向けです。

 

 

最後に登場人物についても言及させていただきたいのですが、伊作のお母さんがかなり強い(特にフィジカル)のが印象的でした。昔の漁村の女は強いのが当たり前だったかもしれませんが、起床の促しなどで気軽に子どもに張り手を喰らわしたりするもんで、どうしても筋骨隆々の筋張ったマッチョなお母さんを想像してしまいました。最後にデリケートな部分見せられて「こんな屈強な女でも…」ってなったよ…

膝上で括った着物からムキムキの脚が伸びて、腕は炭治郎みたいな屈強なのがニョッキリ生えてるの想像しててごめんな。お粥炊いてる横顔はジョジョに出てくるキャラクターみたいなごつごつした険しい顔でイメージしてた。実際はもっとしなやかなのかもしれないのにな。

 

 

 

フゥウウウ…(激深ため息)ちょっと心が疲れたので、

次回も心が疲れそうな本読みま〜す!!!(?!!!!)

 

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