12冊目:さよならに反する現象 乙一さん②
こんばんは、読子です。
こちらの記事は乙一さん「さよならに反する現象②感想編」です。
…聞いてください!白か黒か心配していましたが、一話目を読んだ感じは一先ず黒乙一さんではなかったです!安心して次の話に進めます!
読むぞ読むぞー!
本作は全五話のお話が収録されている短編集です。
収録されているのは以下の作品です。
1.そしてクマになる
2.なごみ探偵おそ松さん・リターンズ
3.家政婦
4.フィルム
5.悠川さんは写りたい
それでは一話ごとの感想に入ります。
1.そしてクマになる
「そして父になる」みたいなタイトルやめ
会社をリストラされた男が、妻に報告できずにいるお話です。男は転職活動をしながら、着ぐるみのクマに変身してアルバイトをします。
最初は優しそうなクマさんの姿を見せられてほっこりしてしまうのですが、物語の進行とともにギスギスした気持ちが彼の心を蝕んでゆき、どんどんおかしな方向へ。
クマの着ぐるみに入ることで物理的に視野が狭くなるだけではなく、会社をリストラされたことで精神的にも視野が狭くなってしまったのでしょう。視野狭窄はいずれ猜疑心に繋がり、疑惑の想像をよくない方向へと掻き立てます。
…ここまでだけ聞くと、
つまりタイトルの「クマになる」とは?
と、ピンとこないかもしれませんが、彼は猜疑心の中でまさに獣のような理性に欠けた気持ちに取り憑かれていたのです。彼がどんなクマさんになるのかは、是非本書にて。
奥様が「クマの着ぐるみはあなただと思った」と夫のアルバイトに気づいた場面は
「わからんか。愛だ、愛」
と唐突に知らないおじさんが耳元で囁き、油屋へと帰っていきました。
2.なごみ探偵おそ松さん・リターンズ
なんだこれ、ちゃんとおそ松さんの絵柄でおそ松さんのアニメーションが再生される…
トト子ちゃん主人公回の「おそ松さん〜カラ松殺人事件編〜」という感じ。カラ松の死亡をめぐり、推理が巡らされるミステリーです。おそ松の登場で急激にゆるさが増します。
イヤミがフリーダムな六つ子の被害を被って終わる流れが「ちゃんとおそ松さん」をより強く感じさせる部分でした。お約束ってやつですね。
まともな解決は目指さないゆるゆるミステリーで、結局トト子ちゃんの可愛さには敵わない!って感じの適当さがよかったです。可愛いの前では全面降伏!
3.家政婦
若い女の子がナイスミドルな作家先生のお家に家政婦として雇われます。勤め先はなんと幽霊屋敷。幽霊にドキドキしつつも、先生・先生の息子・ハンサムな町民との妄想をマイペースにおっぴろげていきます(語弊)。
微ホラーでした。
結局生きてる人間が一番怖いですね…
4.フィルム
星野源さんの曲「フィルム」とのコラボ作品のようです。きちんと星野源さんのPVを拝見してから読みました。めっちゃゾンビ出てきた!(?!)
このお話についてはあまり言及するつもりはありません。というのも、是非実際に読んでいただきたいからです。収録された5作品の中で一番短いお話でしたが、インパクトは一番強かったです。
5.悠川さんは写りたい
私はこんなお茶目で可愛い幽霊を他に知らない。
ああ、どっちのキャラクターも乙一さんワールドの住人だ…と納得の幽霊ちゃんと主人公。こういう掛け合い、他の作品でも見たことがあって安心します。女の子の方が元気いっぱいで、冷静な男の人(主人公)が淡々と流していくスタイル。とてもすき。
ホラーベースだけどこのお話全然怖くないし、めちゃめちゃいい話じゃん好き゛ャアアアア?!!!!(断末魔)