読子の本棚

読んだ本をここの本棚にしまっておきます。

33冊目:さらさら流る 柚木麻子さん

こんにちは、読子です。

 

連日雨降りで梅雨入りしたかと思っていましたが、ここ数日晴れ間(ほぼ曇りだけど)が見えてますね。まだ梅雨入りしてなかったのかな。

梅雨ってジメジメしますけど、お家時間が増えて意外と嫌いじゃないんですよね(どインドア

まああまり雨降りばかり続くと、日光が浴びられずセロトニン生成が少なくなってメンタルがしょんぼりしちゃうので、とりあえず今はまずまずのお天気を楽しむことにしましょ。

正直入院中の身からすればお天気は殆ど関係ないですしね ₍₍ ᕕ( ᐛ )ᕗ⁾⁾テヘー

 

 

さて今回はこちらです。

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柚木麻子さん「さらさら流る」

300ページとちょっとで、近々で読んだ同作家さんの「BUTTER」よりはすっきり目のボリュームです。

 

作家さん買いなのであらすじは確認せず、綺麗な色彩にジャケ買いというかパケ買いというか、そういう買い方をしました。

 

 

あらすじ

主人公の菫はコーヒーチェーンの広報部で働く社会人。ある日の仕事中、広報で使用するモデルの写真について調べていると、ネットの海には何故か“当時交際していた恋人に撮られた過去の自分の裸写真”が漂っていて…

ネットという果てのない大海に流出してしまった自分の写真を巡り、菫がその事実と向き合い成長していくお話です。

 

 

感想

本の中心にくる事件、リベンジポルノでした…

想像してたより数段心が疲れました。

 

 

読む前読子「綺麗な表紙!300ページ少々なので軽めのボリュームです🤗」

読む前読子「綺麗な表紙!300ページ少々なので軽めのボリュームです🤗」

読む前読子「綺麗な表紙!300ページ少々なので軽めのボリュームです🤗」

読む前読子「綺麗な表紙!300ページ少々なので軽めのボリュームです🤗」

 

 

冷静に考えてみろ。柚木さんだぞ。

軽いわけがない😇😇😇

 

 

そもそも私、帯の「私は、私の身体を取り戻したい。」というデカい太文字だけを見て買ったので(前述した通り作家買いジャケ買いなので)ストーリーをちゃんと押さえてなかったんですよね。

 

「身体を取り戻す」ってコピーと優しいタッチの表紙から、辻村深月さんの「ツナグ」とか川口俊和さんの「コーヒーが冷めないうちに」系かと思ってて

「成仏できないので、もう一度生きていた時の姿であの人と会って…」からの「もう大丈夫、あばよ👋」

の感動系ストーリーだとばかり…軽い気持ちで手を出したら痛い目をみました。

とはいえ嫌だったかというと、どちらかといえば

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こう。

 

うまく言語化できないんですけど、「BUTTER」や「ナイルパーチの女子会」のような人間関係のグズグズっぷりとはまた違う嫌な感じで、モッチョリした気持ちになります…アェン…

ただ、主人公の成長ストーリーではありますので、最後には菫の芯の強さに拍手喝采です。

 

 

さて画像流出にあたり関係してくるのが、元恋人(光晴くん)。彼は自分の行動や思考パターンの裏付けを全て「複雑な家庭で育ったから」という家庭因子に結び付けており、なかなか自分自身の核の部分と向き合うことができません。

光晴は明るい家庭で真っ直ぐに育った菫に、憧れのみでなく妬みややっかみのような気持ちまで抱いていました。

でもそんな気持ちは直視しないようにずっと蓋をして、「自分は家庭に恵まれなかったから」を振り翳して菫を傷つけます。

 

そんな彼に職場のバイトさんから一言

「過去に辛いことがあったのかもしれないけど、そんなの、私のせいでも、まして彼女のせいでもないですよね?」

その通りでございまする…ど正論センキュー…

それ読者みんなが思ってたヤツ。

 

 

この二人の交際は《光晴主催の暗渠めぐり》をしたことをきっかけに始まるのですが、そのあともずっとキーワードとして「暗渠」という言葉がずっと登場し続けます。

 

暗渠:「暗渠」とは、地下に埋設した水路のこと。暗溝とも言い、ふたをして分からないようにしている水路も暗渠と呼ぶ。反対語にあたるのが開渠。暗渠は、臭いが出てしまっては生活に問題がある場合や、外部から何かが混入するのを防ぐために使われる。

(出典:東建コーポレーション株式会社「土建士用語集」https://www.token.co.jp/estate/useful/archipedia/word.php?jid=00015&wid=27825&wdid=01#:~:text=)

 

本当にこれ、光晴くんの鏡のような存在だなと思います。見たくない自分の汚い部分に蓋をしている彼の姿は暗渠そのもの。だからこそ彼は、自分によく似た暗渠に惹かれるのかもしれません。

だから本の一番最初に「都内暗渠マップ」があったのね。本当に肝だわね、暗渠。

 

この“光晴”という淀んだ流れと対照に描かれるのが、親友の百合や菫の家族たち

心を病む菫が、家族や親友の百合という健やかで綺麗な流れの中で徐々に己を取り戻していく姿は本当に見ものです。

正直周囲に支えられて立ち上がる菫を追っていると、「まあこの差を見せつけられて家庭環境が…と思ってしまう光晴の言い分もわからなくはない気がする…」とうっかり流されかけますが、結局実際に立ち上がれるかどうかは自分の力にかかっているのであって、菫本人の「現実と向き合う力」があってこそ成せたことですからね。周りができるのはあくまで支える事だけですもんね。

菫の立場だって、全員が全員100%の味方になってくれていた訳ではありません。その中でも「彼を嫌いにならないように。交際していた時の自分が間違っていたと思わないように。」と振る舞う彼女は確実に強くしなやかでしたよ。見習いたい、その姿。

 

菫自身の成長や百合とのやりとりから学ぶことは、本当に沢山ありました。私もこんなふうに考えられたら、こんなふうに人に接することができたら、と彼女らを通して何度も思いました。

小柄で気弱そうな菫のお父さんでさえ、絶対に譲れない一線というのを持っており、万一そこが侵されるようなことがあれば普段見せないような強い一面を見せるのです。

本筋は菫の成長ストーリーではあるけれど、他の登場人物たちにもそれぞれ異なる強さが光っていて、人の強さって素敵だなと感じる作品でした。

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それではまた次回!